膝関節の靭帯組織の機能について解説します。
前十字靭帯(ACL)・後十字靭帯(PCL)
イラストは右膝関節です。
紫色のバンドが前十字靭帯で、
脛骨の果間前方(かかんぜんぽう)から
大腿骨外側顆(がいそくか)に
のびる靭帯です。
緑色のバンドが後十字靭帯で、
脛骨の果間後方(かかんこうほう)から
大腿骨内側顆後方(ないそくかこうほう)に
のびる靭帯です。
この二つの靭帯は膝関節内に存在して、お互いに交差するような構造になっています。
>この構造が、膝関節の安定性を供給することと関節運動の中心軸を形成することに貢献しています。このことについては後述します。
ACL・PCLの働き
前十字靭帯は脛骨の前方移動を制動し、
後十字靭帯は脛骨の後方移動を制動します。
側方安定性に作用する場合、前十字靭帯は膝を60度以上の屈曲(曲げる動き)のときに緊張し、後十字靭帯は膝を完全伸展(ピンっと膝を伸ばした状態)で緊張します。
つまり、それぞれの肢位で、安定化に働くわけです。
内側側副靭帯(MCL)・外側側副靭帯(LCL)
イラストは右膝関節です。
青色のバンドが内側側副靭帯です。
大腿骨内側顆から
脛骨幹上内側(けいこつかんじょうないそく)
に幅広くついています。
人間の膝関節は
生理的外反があるために内側側副靭帯のほうが強靭にできています。
赤いバンドが外側側副靭帯です。
大腿骨外側顆から腓骨頭にのびる靭帯です。
外側側副靭帯は胡坐姿勢のときに、
膝関節の外側で容易に触察できます。
側副靭帯の働き
側副靭帯は膝関節伸展位(膝を伸ばした姿勢)で緊張し、屈曲位(膝を曲げた姿勢)で緩みます。
膝が逆に曲がらないのは側副靭帯の緊張によるところもあります。
内側側副靭帯と外側側副靭帯は脛骨の内旋で緩み、外旋で緊張します。
膝関節の角度による安定性の変化
膝関節は屈曲(膝を曲げる)20~60度のときに、側副靭帯、十字靭帯、大腿顆部殻(だいたいかぶかく)がすこし緩み、不安定な状態になります。
その後、さらに膝を屈曲して60度以上になると、前述したように十字靭帯が緊張(特に前十字靭帯)してきます。
膝関節は屈伸だけでなく回旋運動もできる
膝関節は自由度2の関節です。
自由度2とは、二方向への可動性をもっているということですが、膝の運動は曲げ伸ばしだけじゃないの?と一般の方は思うと思いますが、実は、屈伸運動に伴い、微妙に回旋運動が起こります。
完全伸展位(ピンと伸ばした肢位)では膝関節の回旋運動は起こりませんが、膝を曲げていくにつれて、側副靭帯などの弛緩により回旋運動が可能になります。
関節の生理的な運動として、
膝を伸ばすときに脛骨が外旋(外側にねじれる)運動が起こり、
膝を曲げるときに脛骨が内旋(内側にねじれる)運動が起こります。
回旋運動により前十字靭帯と後十字靭帯の絡み合いがきつくなり大腿骨と脛骨が近接(より近づく)し安定性を増したり、逆に絡み合いが緩んで不安定になったりします。
膝の完全伸展時には、
「スクリューホームムーブメント」と呼ばれる脛骨の外旋が起こり
膝関節の安定化が図られるようになっています。
中心靭帯安定化機構
膝関節が内旋することで、
前十字靭帯と後十字靭帯は絡み合いが強くなり関節面は近接します。
逆に外旋することで
十字靭帯同士は緩み関節面は離開(はなれる)します。
近接すれば安定性は増し、離開すれば安定性は減少
することになります。
スポーツ外傷や障害が起こりやすい膝関節の肢位
膝関節を20~60度前後に曲げた姿勢は
関節が不安定になるということを前述にしました。
この角度でさらに膝関節の外旋が加わると
強い外力により外傷が起こりやすい肢位となります。
損傷される可能性のある部位は、内側側副靭帯、前十字靭帯、内側半月板です。
膝関節の外旋とは、脛骨が外にねじれ、大腿骨が内側にねじれている状態です。
これは、女性に多い内股O脚の脚で見られる「下腿外旋症候群」の状態になります。
スポーツによる膝関節の外傷が女性に多いのは、男性に比べ、骨盤が左右に広く、膝関節のQアングル(膝の外反の度合い)が大きいことと、下腿のねじれによる膝関節の不安定性が関係していると考えられます。
下腿外旋症候群については、内股O脚について書いた記事がありますのでこちらをご覧ください。
O脚の原因にもなっている若い女性に特に多い「下腿外旋症候群」とは?
まとめ
以上、膝関節の靭帯の機能について解説してみました。
膝関節の曲げる角度や微妙な回旋度合いにより、関節を保護している靭帯のテンションが変化して、安定性の変化が起こることがお分かりいただけたと思います。
スポーツ外傷・障害や日常的な膝の痛みに対する運動療法は、このような靭帯の機能、特性を理解したうえでプログラミングされることが大切であると考えます。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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参考文献
新動きの解剖学
ブランディーヌ・カレ‐ジェルマン〔著〕
科学新聞社〔訳〕
カパンジー機能解剖学(全3巻セット)原著第6版
A.I.Kapandji (著), 塩田悦仁 (翻訳)
筋骨格系のキネシオロジー―カラー版
ドナルド・A.ニューマン (著), 嶋田智明 (著)
コメント
こんにちは。
理学療法士のものです。
膝関節の靭帯について軽く見ていて気になるものがありましたので確認のためコメントさせて頂きました。
「
そして、前十字靭帯は膝を60度以上の屈曲(曲げる動き)のときに緊張し、後十字靭帯は膝を完全伸展(ピンっと膝を伸ばした状態)で緊張します。
」
と記載されていますが、
基本的にACLは膝関節の伸展時に緊張し
PCLは伸展時に弛緩すると思われます。
私も気になり基礎運動学という本にて調べたところ、屈曲に関しては可動域により異なりますが、基本的に上に記載した通りだと記載されていました。
このことより、ACLに関しては角度が記載されているので間違いではありませんが、
PCLに関しては伸展位では弛緩すると思います。
また、靭帯の起始、停止的に考えても私はそうと思います。
指摘するようなコメントになってしまい申し訳ありません。
古谷晴香様
ご指摘ありがとうございます。
管理人の岡田です。
十字靭帯の緊張肢位について参考にした資料は、
ドイツ徒手医学のインストラクターをされていた私の師匠(柔道整復師)に
研修の時に頂いたものを参考にしました。
師匠の資料は恐らく、ドイツ徒手医学のテキストを参考に
作成されたものと思いますので、
「カパンジー」や「動きの解剖学」などが基礎にあると
考えられます。
今回、ご指摘があり、再度その参考資料を確認してみると
どうやら私の勘違いであったようです。
参考にした記述を読み返すと、実は膝関節の側方安定性に
関するものでして、資料のスライドをそのままあげてみますと、
____________________
「角度による変化」
・側方安定性
完全伸展位
側副靭帯と大腿顆部殻が緊張
十字靭帯(特に後十字靭帯)も緊張し安定化に働く
____________________
「角度による変化」
・側方安定性
20~60度
側副靭帯、大腿顆部殻、十字靭帯は軽度弛緩し、
不安定性を引き起こす。
60度以上屈曲位では内側側副靭帯、
十字靭帯(特に前十字靭帯)が緊張
_____________________
つまり、膝関節の完全伸展位で、PCLが緊張すると
いうことではなく側方安定性に作用する場合に、
緊張し安定性に働くということでした。
ご指摘ありがとうございました。
早速、修正しておきます。